私の大好きな時代小説の一つに、池波正太郎氏の「仕掛人・藤枝梅安」シリーズがあります。池波氏はこのシリーズの主題として、こう書いています(講談社文庫「殺しの四人」あとがき)。
「人間は、よいことをしながら悪いことをし、悪いことをしながらよいことをしている」
全くその通りだと思います。また、シリーズの中の一つ、「梅安蟻地獄」には、その主題について別の表現をしたこんな一節があります。
《ただ本能的に、無意識のうちに、藤枝梅安が体得していることは、「善と悪とは紙一重」であって、「その見境は、容易につかぬ」と、いうことであった。》
これまた納得のセリフであり、私のような半端物のどうでもいい半生を振り返っても「そうだよなあ」と、しみじみ得心がいくのです。そもそも人生も仕事も、思うように運ぶことの方が珍しいし。
なので、私が日頃、批判的に書いている菅直人首相にしてもその政権にしても、別に彼らのすべてが悪意に満ちて、日本を故意に貶めよう、滅ぼそうとしているなんて思ってはいません。国益よりも保身を優先させ
ているようには見えるのはどうしようもありませんが。
むしろ、彼らも主観的には「よかれ」と考えていろいろと動いているのだろうなとは当然考えています。その結果は全く評価できませんし、そもそも出発点と方向性が間違っているので、いい結果を生むわけがないとも思っているわけですが。
したがって、批判的な記事を書く際にも、まあ、彼らにもいろいろと言い分はあるだろうなということは当然、理解しています。
それでも、こっちはこっちの取材と定点観測から「こうだ」と認識したことは、指摘しておくべきだと思いますし、それが仕事でもあります。
ただ、今回の原発事故への初動対応をめぐる混乱について、政府筋が記者団に次のようにさも些事であるかのように言い放つのを聞くと、やっぱりふつふつと怒りがわくわけです。
この人たちは「反省心」というものを持たないのかと。ああそうでした、菅首相は国会で何度もそもそも「心がない」と指摘されていましたね…。
「何であんなニュースになっているの?新聞見てもそうだけど。何がニュースか分からない。『再臨界の可能性はゼロではない』って、その水素爆発が起きた時に班目春樹原子力安全委員長に言われたら、それは検討しなきゃってなるでしょ。何がそんなニュースになるのかなあ?」(政府筋コメント)
菅首相の言動をきっかけに海水注入が中断した、という疑惑がそんな取るに足らないことでしょうか。梅安がいたら「仕掛け」を依頼したくなる、そんなきょうこのごろでした。
※今発売中の週刊ポスト書評欄で、東大の山内昌之教授が私の著書「政権交代の悪夢」を取り上げてくれました。この場を借りてお礼を述べたいと思います。ありがとうございました。
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7917 政府筋コメントと仕掛人・梅安と 阿比留瑠比
阿比留瑠比
コメント
遅かれ早かれ菅内閣と民主党は政権の座から追われる。
民主党統治下の耐え難い苦痛と、もたらされた政治的災厄に関し、今後歴史的検証が必要であると思う。その項目としては
①選挙以前からその夢想的選挙公約には予算の裏付けがないと明白だったのにも拘わらず、日本国民は何故民主党に政権を与えたのであろうか?
②2009年総選挙前のマスコミの激しい自民党批判と民主党への賛意は、明らかに同選挙結果に影響を与えた。第四権力としてのマスコミの力を正当に評価し、その「権力」に他の三権が備えている相互牽制の法的掣肘を加えるべきではないか?
③1933年ドイツ国民が国家社会主義ドイツ労働者党に政権を託したことと2009年
日本国民が民主党に政権を託したことに類似性があるのではないか? あるとすればそれは何か。。
いずれも大きな問題であり、是非世の識者の皆様からご意見を」拝聴したいものである。