9118 経営評論家・針木の「遺言」 岩見隆夫

選挙の年、と言われながら、政界のキーマンたちに聞くと、「衆院解散は結局できない。内閣支持率が下がりすぎた。ズルズルと年を越すのじゃないか」と読む人がおれば、
「6月解散で決まりでしょう」と明言する人もいて、はっきりしない。
そんななか、中央政界でとりあえず注目される人物は3人だ。野田佳彦首相は当然として、1人は民主党の小沢一郎元代表、倒閣に動き出したとみていい。先日も、<小沢一郎政治塾>の講演で、
「カネがないと言うが、自民党と同じことをやっててカネがないのは当たり前だ」などと野田政権をこっぴどく批判した。しかし、そのカネをめぐる疑惑で、小沢裁判の判決が近づいている。
もう1人は、すでに新党結成を明らかにしている石原慎太郎東京都知事だ。長男、伸晃自民党幹事長との口げんかがゴシップになったが、こっちは大した話ではない。
54歳、69歳、79歳と世代の違うこの3人の今後の動向が、衆院解散のタイミングとからみ、野田政権の命運ともからむ。目が離せない。
話はかわるが、経営評論家の針木康雄が14日、急性心不全で亡くなった。80歳。針木は経済誌「財界」の編集長を経て、1987年、出版社「経営塾」を設立、「月刊BOSS」を発行してきた。
各界から著名講師を招く経営塾フォーラムも毎月開き、300回近くに及んだ。針木のように人脈を広げた出版人は最近めずらしく、何本かのコラムを書き続け、政治家にも鋭い筆を向けていた。3人も当然入ってくる。
このところは、小沢の金権体質を集中的にやり玉にあげていたが、最新のコラム<平河だより>(「月刊経営塾フォーラム」2月号)では、野田も標的にしている。
<野田総理は「収支一体改革」などと消費税率の引き上げに突進しているが、それは足りない予算の穴埋めという目先の問題を解決するためにウロウロする姿である。いかにも信念に基づいているかのように言うが、所詮どじょうが金魚の真似(まね)をしているだけだ>
と厳しい。しかし、このコラムの狙いは野田批判ではなく、<石原新党>待望論のほうにある。
<石原慎太郎に期待するのは彼の思想とパワーである。才気は十分に感じられる。芥川賞選考委員を辞める言もいいし、受賞者に返す言葉も彼らしい。……>などと石原礼賛が続く。さらに、書く。
<傘寿を迎えて、才なきものは才あるものを扶(たす)くべしという心境になった。私の職業を通じて彼を支援し、国のトップとして立つ姿を夢見るほかない。
彼は昭和7年生まれ、80歳直前である。年齢的につらいものがあるが、一つ頑張って日本という国の機関車になってもらいたい。
多くの国民の欲求不満を吹き飛ばすような活力で、蒸気機関車D51のスタートを切ってほしい。一波が万波を呼ぶという。私の小さな掛け声に、多くの人が応じてくれればいい>
針木の遺言と言っていいだろう。同世代の石原に夢を託して世を去った。
さて、再び3人である。日本の政治家に欠けているのは国家観と国際感覚だ、とも針木は書いている。野田と小沢にはその両方が乏しいように映る。
針木がほれこんだ石原は、日本をどうしようとしているのか。断片的なキレのいい主張は多く聞いたが、この際、体系的な考え方を披歴してもらいたい。(敬称略)
杜父魚文庫

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