15750 弱腰オバマ政権はフィリピン防衛にどこまで本気か?   宮崎正弘

■アキノ政権、米国と防衛条約の再改訂を討議、4月末に発表か。
フィリピンはスカボロー岩礁を中国に奪われた上、南方のセコンド・トーマス環礁に駐屯するフィリピン海兵隊への輸送船を中国海軍に妨害され、その中国への怒りは高まっている。
アジアタイムズ(3月27日)に拠れば、すでにフィリピン政権は米軍と「米比安保条約の改定を討議しており、四月末のオバマ訪問を前に概要が発表される政治日程にある」と伝えた。
 
スビック湾の海軍基地とクラーク空軍基地から撤退した米軍は、2002年の対テロ戦争宣言以後、空白状態のフィリピンに500名前後の特別チームを派遣している。これは「太平洋特別作戦」の一環で、ミンダナオ周辺に盤踞するアルカィーダ系の「アブ・サヤフ」(武装組織、イスラム過激派)との軍事衝突に対して、防衛装備品や武器提供とテロ防止の軍事訓練が目的だ。
そのうえ、昨秋フィリピンをおそった台風被害の救援を名目に米国は空母を筆頭に多数の軍人を派遣し「友だち作戦」を展開した。
現在検討されている米比安保条約改定の内容は、これまでの「フィリピン国内での危機対応」という主目的が、近年の中国の侵略的行為を目の前にして「対外敵対勢力との対応」へと焦点が移されているという。
とくに「敵海軍への偵察情報の共有、海軍施設のシェアと装備強化」などが唱われているとされる。現存の米比安保条約は米軍の国内駐留を認めていないが、これも「臨時的に駐留を認める」と条項が変更される手はずだと前掲アジアタイムズが伝えた。
米国は「ピボット」「リバランス」を打ち出して海軍の60%を太平洋に移管するとしたものの、実現には至らないばかりか大幅な国防費カット、アジア諸国はオバマ政権への不信を募らせている。
 ▲オバマの外交不在の空白に乗じる北京
そのうえ、オバマ大統領自身がこれ以上の南シナ海の領海係争に関与したくないという姿勢であり、ペンタゴンが密かに進めている米比安保条約改定に乗り気ではない。ペンタゴンはオバマ政権の防衛戦略に不快感を示しており、関係は険悪でもある。
オバマはあきらかに中国を重視して、フィリピン、韓国、日本を訪問する前にミッチェル夫人を一週間も中国に親善訪問させてバランスをとる等、外交戦略がはちゃめちゃである。
米国内ばかりか国際社会でもオバマ大統領への評価は最悪に近いが、その無能力を中国はチャンスととらえ隙を突いているのだ。
これらの情勢をふまえてフィリピンは日本への接近を急速に強めてきたが、直近の情報ではベトナムとの協同も視野に入れており、就中、三月に訪日したベトナム主席と安倍首相との会談で防衛協力が討議された事実に着目し、フィリピンは将来的に「日越比」三国の防衛協力をも視野に入れたと分析されている。
杜父魚文庫

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